※この記事は、映画『突然、君がいなくなって』をこれから見る方へ向けた紹介&ちょこっと感想です。
予告や公式サイトでわかる程度の展開には触れていますが、映画の結末や重大な展開には触れていない、ネタバレなし感想になります。
どんな作品なのかを知りたい方は、ぜひご覧になってください。
この記事で、この映画に興味を持ってもらえたら嬉しいです。
※この映画の日本公開はほぼ終了していますが、10月17日(金)~10月30日(木)まで、
「イオンシネマ浦和美園」
「イオンシネマ新潟西」
で上映しています。
映画『突然、君がいなくなって』(2024)|基本情報・キャスト
『突然、君がいなくなって』(日本公開/2025年)
英題:When the Light Breaks(PG12)
制作国:アイスランド・オランダ・クロアチア・フランス(2024年)
言語:アイスランド語
監督・脚本:ルーナ・ルーナソン
撮影:ソフィア・オルソン
音楽:ヨハン・ヨハンソン
キャスト:エリーン・ハットル、ミカエル・コーバー、カトラ・ニャルスドッティル、バルドゥル・エイナルソン、アゥグスト・ウィグム、グンナル・フラプン・クリスチャンソン、ほか
上映時間:80分
配給:ビターズ・エンド
→映画『突然、君がいなくなって』の公式サイトはこちら
映画『突然、君がいなくなって』のあらすじ|喪失の悲しみを誰にも打ち明けられないとしたら?
アイスランド、レイキャビクの美大に通うウナ(エリーン・ハットル)には、同じ大学でバンド仲間でもあるディッディ(バルドゥル・エイナルソン)という恋人がいる。
仲睦まじい2人だが、その関係は周囲には秘密だった。
なぜならディッディには、遠距離恋愛をしているクララ(カトラ・ニャルスドッティル)というもう1人の恋人がいるからだ。
ある日、クララに別れを告げに行く、と家を出たディッディだったが、思わぬ事故に巻き込まれてしまう。
その事故によってディッディは帰らぬ人となってしまうが、周囲の仲間には「ディッディの友人でバンド仲間」として認識されているウナは、恋人としての悲しみを表に出すことができないでいた。
そこへ、事故の一報を受けたクララが現れる。
“ディッディの恋人”として、仲間たちに励まされるクララを見て、ウナの心は追い詰められていくが……
『突然、君がいなくなって』感想:言葉よりも深い癒し|アイスランドの文化に見る「ハグ」の効能
アイスランドの人たちは、すごくハグをするんだな。
というのが、最初に思った感想です。
日本でこんなふうに深く頻繁にハグをしていたら、その相手の性別問わず、恋人関係にあると思われてしまうだろうなと思います。
アイスランド制作の映画を見たのが、もしかしたら人生初かもしれないんですが、他の欧米諸国の映画でも、ここまでハグをしている姿は見たことない気がします。
最初こそ「すんごいハグばっかりしてるなー」と、どこか他人事というか、自分とは関係のない文化だな、という感じで見ていたんですが、ストーリーが進むにつれ、ハグのもたらす効能というか、癒しの力を感じるようになりました。
下手な言葉や慰めよりも、ハグをすることで気持ちを伝え合う。
ハグすること、ハグされることで、「1人じゃない、そばにいる」「気持ちを共有しているよ」というメッセージになる。
若いときに友人が突然事故で亡くなった、というような場合、「なんであいつが」「行くのを止めればよかった」みたいな、やり場のない思いを口にして号泣したりして、周囲の人が「まだ信じられない」「あなたのせいじゃないよ」という慰めの言葉をかける、という光景が繰り広げられる気がします。
だけどアイスランドでは、そうじゃない。
嘆きの言葉や態度に対し、言葉をかけるのではなく、ただ深くハグをするのです。
あなたの気持ちはわかっているよ、私も同じ思いだよ、と。
これが真のボディランゲージってやつか、と思いました。
この形での感情表現に慣れている人たちにとっては、ハグすることで気持ちを伝え合うのは、息をするように普通のことなんだなと思いました。
日本人にはなかなか馴染みのない感情表現ですが、映画を見終わるころには、ハグで気持ちを伝え合うという文化のことを理解できたような気持ちになれると思います。
秘密の恋人ウナと、“正式な”恋人クララとの出会いがもたらすもの
ウナはディッディと付き合っていますが、周囲はそれを知りません。
2人が、というか主にディッディが、それを秘密にしていたからです。
ディッディ最低だな、と思いますが、彼を追悼し偲ぶ友人や恋人(ウナ、クララ)を見ていると、いい友人であり、いい恋人だったんだろうなと思うので、なんとも言えない感情に襲われます。
なんでもっと誠意ある対応をしなかったんだろう?
そうすれば、ウナはここまで追い詰められることはなかったのに、と。
クララと別れてからウナと付き合えばよかったのでは?
ウナはクララの存在を知っているけど、クララはウナの存在を知っているのか?
“正式な”恋人として周囲に慰められ、労られるクララと、誰にも気持ちを打ち明けられないウナの対比がむごすぎないか?
などなど、この映画を見ながら、いろいろなことを考えてしまいます。
このあたりのことについて語ろうとすると、どうしてもネタバレになってしまうので、それはネタバレ感想として別記事にしたいなと考えています。
『突然、君がいなくなって』のみどころ|アイスランドの長い一日を体感できる
この物語は、「ディッディが事故に巻き込まれた日」の出来事を描いています。
最初のほうにディッディとウナの関係を観客に見せるためのシーンがありますが、ほとんどがこの「事故があった日の、関係者にとっての長い一日」の描写です。
- ディッディが事故に遭う
- ウナをはじめとする関係者がそのことを知る
- 遠距離にいるクララが駆けつける
- 悲しみに暮れるクララをなぐさめる
- 誰にもディッディとの関係を言えないウナが追い詰められていく
- それぞれが親しい友人を失ったことを受け入れようともがく
というのが描写されているんですけど、見ていると、ふと疑問に感じることがあります。
あれ?
もしかして日付変わった?
でもみんな同じ服着てるし、同じ一日の話だよね?
なんか、一日が長くない?
そうなんです。
物理的に一日が長いんです。
白夜なんですよ。
映画を見ているこっちの体感だと、日付変わってるよね? と思うくらいにたくさんの出来事が起こってるんですが、これは「長い長い一日の話」なんです。
時刻表示で考えると、実際は日をまたいでいると思いますが、その一日を過ごしている人々にとっては、「とある一日のできごと」なんですよね。
親しい人(恋人・友人)を喪失した一日なので、ただでさえ長く感じるだろうに、日が沈まないため、物理的にも一日が長いんです。
題材的に、これを面白いと言っていいのかわかりませんが、すごく興味深いなと思いました。
白夜がもたらす物理的な「終わりのなさ」は、ウナの心の中の秘密や悲しみが終わらないことと重なります。
アイスランドの静謐で美しい風景とあいまって、彼女の抱える孤独や激情を際立たせているのです。
北欧映画ならではの、明るさの中にある暗闇を垣間見ることができるような描写も、この作品の大きな魅力だと思います。
長い長い一日をかけて、喪失と向き合う若者たちの物語。
アイスランドの白夜を、日が沈まない長い一日を、この映画を見ることで体感してみてください。
映画『突然、君がいなくなって』のまとめ|日が沈まない白夜の長い一日
『突然、君がいなくなって』は、愛する人の突然の喪失という、ある意味では普遍的な悲劇を、アイスランドの白夜という特殊な環境と、温かいハグ文化という独自の視点で描き出した秀作です。
言葉にならない悲しみ、隠された秘密、そして物理的に「終わらない」長い一日を通じて、主人公ウナがどのように喪失と向き合うのか。
上映時間は映画としては短めの80分ですが、「長い長い一日」を描くには十分です。
この作品は、2025年6〜7月にかけて日本で公開されたものになります。
なので、まだ配信が始まっていません。
配信が始まったら、この記事であらためて紹介したいと思います。
また、10月30日まで、
「イオンシネマ浦和美園」
「イオンシネマ新潟西」
で上映していますので、映画館へ行ける方は、ぜひこの作品を映画館でご覧になってください。
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