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【映画紹介】8番出口

映画の紹介と感想

※この記事は、この作品をこれから見る方へ向けた紹介&ちょこっと感想です。
予告や公式サイトでわかる程度の展開には触れていますが、映画の結末や重大な展開には触れていない、ネタバレなし感想になります。

どんな作品なのかを知りたい方は、ぜひご覧になってください。
この記事で、この映画に興味を持ってもらえたら嬉しいです。

映画『8番出口』の基本情報|公開日・キャスト

『8番出口』(2025年8月29日公開/日本)
原作:KOTAKE CREATE「8番出口」
監督:川村元気
脚本:平瀬謙太朗・川村元気
音楽:Yasutaka Nakata(CAPSULE)・綱守将平
出演(キャスト):二宮和也、河内大和、浅沼成、花瀬琴音、小松菜奈、ほか
配給:東宝

→映画『8番出口』の公式サイトはこちら

映画のあらすじ(ネタバレなし)

地下鉄の車両から降りた男(二宮和也)は、スマートフォンにかかってきた電話の相手と通話しながら、地下鉄構内を歩いていた。
人混みの中で他人にぶつかったり、喘息の発作が出そうになって吸入薬を吸い込んだり、と周囲をよく見ないまま、彼は通路を進んでいく。

ふと気づくと、通路には彼1人。
早く地上に出なければと、出口を目指して進んでいくうちに、彼は違和感に気づく。

通路の角を何回曲がっても、同じ通路に出てしまうこと。
その通路の前方から歩いてきて、彼とすれ違う男性が、毎回同じ人物であること。

自分が同じ通路をループしていると気づいた彼は、通路に掲示されている【ご案内】の掲示に、ふと目を留める。
そこには、こう書かれていた。

「異変を見逃さないこと」
「8番出口から外に出ること」

混乱しながらも「ルール」を理解した彼は、8番出口を目指して進み続けるのだが……

引用:『8番出口』公式サイトより

ご案内 Information

異変を見逃さないこと
Do not overlook any anomalies.

異変を見つけたら、すぐに引き返すこと
If you find an anomaly, turn back immediately.

異変が見つからなかったら、引き返さないこと
If you do not find any anomalies, do not turn back.

8番出口から外に出ること
Go out from Exit 8.

どんな映画?|ジャンルは“ワンシチュエーション×不条理ホラー”

映画『8番出口』の予告を映画館で見たとき、「えっ?」と思いました。
『8番出口』って、あの『8番出口』?
不条理系ワンシチュエーションホラーゲームだよね?
実写映画化するの?

ゲームを実写で映画化するというのは、結構冒険というか、賭けに出ている感じがします。
ゲームの認知度によって、見る人/見ない人がはっきり分かれる可能性があるし、映画の出来によっては、原作のゲームを好きな人から非難されることもあるかもしれません。

ゲームというのは、プレイした人それぞれが、自分だけの物語を作り出し、思い入れを持つものだからです。
その思い入れを破壊するかもしれないものを作るのは、かなりリスキーです。
それなのに、実写で映画にするの?
と思ったのです。

ただ、このゲームを映画化したい、というか、映像化したい、と思う気持ちはわかる気がします。
日本の地下鉄によくある通路での、無限ループ脱出ゲーム。
「あの地下通路が実写で映像化される」というのは、非常に興味深いし、見てみたいです。

観客側が「見てみたい」と思うのと同様に、製作者側も「作ってみたい」「映像化してみたい」「撮ってみたい」と考えると思います。
ゲームの舞台となっている地下通路が、多くの日本人にとって、実生活で、またはドラマや映画などで、“見覚えのある”馴染みの深い場所なので、この視覚的な面白さを映像でみんなに届けたい、と思うのは当然です。

映画を見る前に知りたい! ざっくりFAQ

Q:ゲームを未プレイでも楽しめますか?
A:ルールがシンプルなので問題ありません。映画内の情報だけで理解できます。

Q:グロい描写はありますか?
A:ビックリ系より、“じわっと不条理”寄りの怖さです(※感じ方には個人差があります)

Q:どんな人に向いていますか?
A:ループものや、観察系の緊張感が好きな人、都市の日常がちょっと不気味に見える感覚が好きな人におすすめです。

原作ゲームはどんな内容?(未プレイでも問題なし!)

原作となったゲーム『8番出口』は、インディーズゲームクリエイターのKOTAKE CREATEさんがたったひとりで制作したものだそうです。

私はこのゲームをプレイしたことはありません。
ですが、“このゲームを実際にプレイしている映像に、プレイヤーがゲームをしながら状況や感想を実況している声がついている動画”を見たことがあります。
そういう動画を、ゲーム実況動画と呼びます。

ゲーム実況動画の中でも、最速でゲームクリアを目指してプレイしているものを、RTA動画と言うようです。
RTAは、「リアルタイムアタック」の略称です。

私が見たのは、“『8番出口』のRTA実況動画”でした。
ゲームをプレイしている動画投稿者が、素早く「異変の有無」を判断し、異変があれば引き返し、異変が見つからなければそのまま進む、というのを繰り返していました。

このゲームのジャンルはホラーだと思いますが、私の見たものがRTA動画だったため、「異変の有無と、プレイヤーの判断の成否」に視聴者としての興味が集中してしまい、ホラーゲーム本来の怖さはあまり感じなかったです。
でも、コンセプトがすごく面白いゲームだな、と思いました。

ルール解説|無限ループから抜け出すには

基本ルール:異変があれば引き返す/なければ進む

このゲームの目的は、ループ状態になってしまっている地下通路の「8番出口から外に出る」ことです。
そのための手段が、「異変を探す」こと。

始まりは、「0番出口」。
通路に異変がなければそのまま進み、異変があれば引き返す。
その判断が正しければ、「0番出口」から「1番出口」へ進むことができます。

「0番出口」も「1番出口」も、ぱっと見では通路はまったく同じに見えます。
同じように見える通路のどこかに異変があるか探し、あれば引き返し、なければそのまま進んでいく。
成功すれば、「2番出口」「3番出口」「4番出口」と、だんだん「8番出口」に近づいていきます。
だけど判断を間違えると、また「0番出口」に戻ってしまい、最初からやり直しになってしまうのです。

難しさの正体:異変を見落とすと振り出しに戻る

異変は毎回変化するため、前回の経験は通用しません。
常に新しい異変を見つけ続けなければならないのです。
それがこのゲームの難しいところであり、無限ループから抜け出せないという絶望感を生むポイントになっています。

ゲーム実況動画を見たとき、このループから抜け出すのは大変だなと感じました。
異変を見落とさないようにするのが難しいのはもちろん、何度も同じ行動を繰り返し、あと少しで8番出口だと思ったところで間違えて振り出しに戻り、また最初からやり直すことになるというのが、ずっと続くからです。

でも、だからこそ、映画化されるなら見にいきたいと思いました。
この絶望的なループを“映像で体感できる”のは、とても面白そうだと思ったからです。

ちょこっと感想:ループものが好きな人におすすめ

私はタイムリープものやループものが好きなので、「毎回少しずつ様子の違う、繰り返される物語」を見るのを楽しいと感じます。
なので、『8番出口』のゲーム実況動画はとても面白かったです。
しかもRTA動画だったので、めっちゃサクサク進むんです。
面白いゲームだなあ、でも自分がプレイするとなると大変そう、と思ったりしました。

『8番出口』はタイムリープではなく、ループです。
ループものは、“時間や場所に囚われてしまい、何度も同じ時間を繰り返す”というものになります。
自分でタイムマシンやタイムリープ能力を使ってループするのではなく、時空の歪みなどにはまってしまい、否応なく時間のループに巻き込まれてしまうものを指します。

ループものの映画といえば、トム・クルーズ主演の『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(2014年/日本のライトノベル『All You Need Is Kill』が原作)、『リバー、流れないでよ』 (2023年/日本)などがあります。
どちらもとても面白いです。

あくまでも、主人公の意志とは関係なく、ループという現象に巻き込まれてしまう、というのが、タイムリープものとの違いかなと思います。

映画『8番出口』でも、繰り返されるループに翻弄される男(二宮和也)を見ながら、大変だなとずっと思っていました。
厳密に言うと、時間が巻き戻っているのではありません。
エッシャーの階段を永遠に登り続けなければいけないような感じのループです。

もし自分も、このループに巻き込まれたら?
この映画を見た誰もがそう思って、自分ならどうするかを考えると思います。

映画を見ながら、“明らかな異変が起きているのに、引き返そうとしない”シーンがあると、「なんで引き返さない!?」と思ったりしました。
でも、実際にこの状況に直面したら、ゲームをプレイしているときのような判断はできないんだろうと思います。
ゲームをプレイしている側は、これがゲームだと知っているけど、映画の物語の中の人たちにとっては、ゲームではなく現実ですからね。

自分ならどうするか? というのを考えながら見るのも、おすすめです。

ロケ地はある? 駅のモデルの噂メモ

・ゲームの舞台となっている(地下鉄の)地下通路は実在するのか
・モデルとなった駅はあるのか

ゲームをプレイした、もしくはこの映画を見た方は、この疑問を持つんじゃないかと思います。
その答えは、原作者(ゲーム製作者)のコタケさんのインタビューや、ご本人によるSNSへの投稿で示唆されています。

「天井の照明のモデルとして、東京メトロの清澄白河駅の名前が上がっているが、この駅は地下通路のモデルではない」
「モデルとなった駅は大阪の駅で、(コタケさんが)専門学校生だったときに通学に利用していた」

以上のご本人からの答えによると、モデルとなった駅はあるけれど、ゲームに登場する地下通路そのものは実在しない、ということらしいです。

なので、この映画で描かれた地下通路は、実際に駅でロケを行ったものではなく、スタジオセットだと考えるのが自然です。
まあ、撮影のために地下通路を何日も貸し切る、なんてことができるとも思えませんしね。

もしも実在の駅で撮影が行われていたら、その駅が聖地巡礼の場所になったかもしれません。
ただ、天井の照明に関しては、清澄白河駅に似たような照明があることから、この駅が聖地巡礼の場所となっているらしいです。

実写映画化を知ったときに頭に浮かんだ3つの疑問

主人公は「誰」になるのか?

ゲームなので、“主人公”はプレイヤー、つまり“ゲームで遊んでいる人”です。
通常のゲームには、主人公が動かすことのできるアバターが存在します。
しかしこのゲームには、アバターの実像が存在しません。

なんというか、“視点”だけが存在しているんですね。
プレイヤーがゲーム内の主人公の“視点”を見ながら、そこにあるであろう体を動かしている、という感じです。
だから、ゲームの“主人公”の体がゲーム内で描写されることはありません。

どんな外見をしているのか等の描写がまったくないので、「誰」を、どんな設定で“主人公”にするんだろう、と思いました。

「目的」はどう描かれるのか?

このゲームの「目的」は、「8番出口から外に出ること」です。
もっと詳しく言うと、「永遠にループし続ける無限回廊と化している地下通路から、抜け出すこと」です。
抜け出すためには8番出口まで行かなくてはならないから、「8番出口から外に出ること」が目的となっています。

ゲームなら、「8番出口から外に出る」ことができれば、そこでゲームクリアなので、それでいいです。
でも、これが映画、つまり“主人公のいる物語”となると、それで物語終了、というわけにはいかない気がします。

この主人公が「8番出口から外に出ること」に、“必死になる理由付け”が必要になる。
それがこの映画における、あらたな「目的」になるんだろうな、と。

その「目的」が、恋愛や家族愛に絡むものとされて、それにまつわる過剰な演出があったら嫌だな、と思いました。

邦画ならではの“余計な演出”はあるのか?

「目的」のところでも触れましたが、原作があるものや諸外国作品のリメイクなどで、邦画(日本映画)がやりがちな演出があります。
原作にはない恋愛要素を絡めたり、お涙頂戴的な事情を絡めたり、というものです。

個人的に、この系統の演出は好きではないです。
こういう、私にとっては余計な演出がされるたびに、「なんでこんないらんものをくっつけるんだ?」とげんなりしてしまいます。

たとえば私の大好きな『キューブ(Cube)』(1998年/カナダ)というホラー映画があるんですが、この映画を日本でリメイクした作品は、オリジナルへのリスペクトはありましたけれども、なんで日本で作るとこうなっちゃうんだろう、と思ってしまうものでした(個人の感想です)。

なので、“ループからの脱出と、異変(怪異)から逃げること、そしてクリアすることが目的の、無機質な不条理ホラー”だから面白い『8番出口』というゲームが、よくあるメロドラマ系映画になってしまったら、興醒めだなと思いました。

もっとも、そんなことは映画の制作陣は百も承知だと思います。
だから、そういうふうにはしないはず。
するかもしれないけど、抑えめにするはず。
少なくとも、過剰な演出にはしないはずです。

それが気になったのもあって、この映画を見に行ったわけですが、原作ゲームを好きな人だけじゃなく、いろいろな層へ向けた映画として作ったんだなと感じました。

こんな人におすすめしたい! 6つのポイント

・ループものが好きな人

同じような場面や行動が繰り返される中で、違い(異変)を見つける面白さがあります。
「異変を見つけること」が主題でもあるので、登場人物になったような気持ちで、異変を探しながら見ると楽しいと思います。

・ワンシチュエーションものが好きな人

ひとつの場所や状況だけで物語が進行する、という作品が好きなら、楽しめると思います。
地下通路でのループ、そこからの脱出を目指すという点で、まさにこの作品はワンシチュエーションスリラーだと言えるでしょう。
設定(ルール)に縛られているからこそ、その制約を逆手に取ったアイディアが面白いので、『CUBE』(1997年/カナダ)のような映画が好きなら、おすすめです。

・ホラーゲームの実写化に興味がある人

“ゲーム”ならではのルールを、映画がどのように映像化しているのか?
実写ならではの不気味さを体験できます。
特におすすめなのは、前方から歩いてきてすれ違う「おじさん」を演じるキャスト、河内大和さんです。
原作ゲームのファンなら一見の価値あり、いや、必見だと思います。

・地下鉄の通路という“日常の風景”に、どことなく不気味さを感じている人

見慣れた風景ほど、不条理な仕掛けが際立ちます。
この映画を見終わったあと、いつもの地下通路がちょっと違って見えるかもしれません。
歩きスマホなんかしていたら、ループに巻き込まれてしまうかも?

・二宮和也、小松菜奈というキャストに惹かれる人

演技派ふたりの共演で、無機質で不気味なループものにどんな人間味が加わるのか。
過剰な演出で台無しになってしまうのか、それとも?
私は小松菜奈さんが出演することを知らずに鑑賞しましたが、とても印象に残りました。
キャスト目当てでも、十分楽しめると思います。

・映画のテーマ曲である『ボレロ』が好きな人

同じ(ような)フレーズが繰り返される楽曲として有名な『ボレロ』が、効果的な使われ方をしています。
メインテーマとして『ボレロ』を選曲したのは、この繰り返しの物語にぴったりだと思いました。

同じようなフレーズが繰り返されるけど、少しずつ演奏する楽器が増えていき、クライマックスに向けて盛り上がっていく『ボレロ』。
同じように見えるけれど、違うところを見つけながら、少しずつ出口(クライマックス)に近づいていく物語。

それがどんなふうに絡み合うのかを、ぜひ映画館の大きな画面と音で体感してみてください。

 

この記事内で紹介した関連映画の配信情報

amazonプライムビデオで、それぞれレンタルや会員見放題配信されています。

・『キューブ(Cube)』(1998年/カナダ)
見知らぬ男女6人が謎の立方体でできている建造物に閉じ込められてしまう。
仕掛けられている罠をかいくぐり、彼らは無事に脱出できるのか?
というワンシチュエーションホラーです。
(※かなりグロ強めというか、痛そうです。でもすごく面白いし、感動しますよ!)


キューブ (字幕版)

 

・『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(2014年/アメリカ/原作は日本の小説『All You Need Is Kill』)
戦闘で死ぬたびに、ある“時間”に戻ってしまう。
戦い、死んで、また時間が戻り、戦い、死ぬ。
この繰り返しから逃れるためにはどうすればいいのか?
ループから抜け出すためのさまざまなトライ&エラーが面白いのと、切なさもある物語です。


オール・ユー・ニード・イズ・キル(字幕版)

 


オール・ユー・ニード・イズ・キル(吹替版)

 

・『リバー、流れないでよ』(2023年/日本/ヨーロッパ企画)
京都・貴船の老舗料理旅館「ふじや」を舞台に、“2分間”が繰り返される!?
冬のある日、ミコトはいつのまにか自分が“2分前に”戻っていることに気が付く。
そこから2分が過ぎると、また2分前に戻ってしまう。
ループしていることに気づくミコトだったが、ミコト以外の仲居・料理人・女将・宿泊客に至るまで、2分前に戻ってしまっていることに気づいていく。
一向に熱くならない熱燗,出来上がることのない雑炊。
この“2分間”から、彼らは抜け出すことができるのか?
2分という短い時間で、こんなに毎回違うことができるんだ!? という面白さ。
明るいテイストのコメディ映画なので、見ていてとても楽しいです。


リバー、流れないでよ

 

 

 

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