アマチュア

映画の紹介と感想

基本情報

アマチュア(2025年/アメリカ)
監督:ジェームズ・ホーズ
制作:ラミ・マレック
主演:ラミ・マレック
出演:ローレンス・フィッシュバーン、レイチェル・ブロズナハン、他

あらすじ

“殺し”は、アマチュア。“ミッション”は、妻の復讐━━

CIA分析官として働くチャーリー・ヘラーは、ある日イギリスへ出張していた妻のサラが、国際テロ組織の人質事件に巻き込まれて殺されたことを知る。

持ち前の分析能力を活かし、妻を殺した4人組のテロリストの身元を突き止め、ヘラーは上司に報告する。
しかし、上司はテロ組織メンバーの逮捕へ動き出そうとしない。
匿名の協力者であるインクワラインから得た情報により、CIAが機密作戦において虚偽の報告をしていたことを知ったヘラーは、上司のことが信用できなくなっていく。

妻を殺した犯人たちへの復讐は、自分でするしかない。

そう決意したヘラーは、人を殴ることも銃の扱いもままならない自分が、“殺し”に向いていないことを自覚しながらも、復讐のために動き出すのだが……

感想

“殺し”はアマチュア、というか、“殺し”以前の問題で、頭は超絶いいけどアクションとかまったくできなさそうなヘラーに、そもそもテロ組織を追い詰めるとかできるのか!?

という感じで始まった本作。
まったく同じことを思ったらしい上司に嘲笑されるヘラーを見て、思いました。

確かに、この人はちょっと身体能力的には、へなちょこっぽい。
でも分析能力は世界最高レベルなんだろうし、デジタルを駆使するというのは現代の情報戦が主戦場な世界情勢にも合っている。
無理っぽいけど、頑張ればできるんじゃない!?

そう思った瞬間から、ちょっと頼りない感じがするヘラーの一挙手一投足をハラハラドキドキしながら見守るという、ある意味で応援上映のような鑑賞体験が始まったのです。

見ていて、

「え、ちょ、えっ、ちょっとちょっと、そんなことしてる場合か!? えっ、ぶっつけ本番なの!? まあ確かにそんな経験ないだろうしね!? でも、えっ、ちょちょちょちょ、早く早く早く逃げろ! えっ、ちょ、わ、うわ、わあ、わああ、ちょいちょいちょいちょい!待て待て! おーーい! いや早く逃げろって!」

という感じでずっとハラハラ見守り、大丈夫か大丈夫か、とドキドキし続けるという、なんか面白い体験ができました。

普通のスパイ映画だと、超絶危険な状況での、いやこれ人間やめてるだろ的なアクションにハラハラドキドキするのですが、それは“アクションの超絶技巧”にハラハラしているのであって、この人大丈夫か!? みたいな心配ってあんまりしない気がします。

主人公なら、大ピンチに陥ったり、一度敵の手に落ちたとしても、大抵のことは切り抜けられるだろう、と思いますし。
でも、ヘラーは、えー大丈夫なの!? 本当に大丈夫なの!? とずっと思い続けるという、珍しい主人公でした。

上司に「できるわけがない、お前に何ができるんだ」というように嘲笑されたシーンを見て、こちらはムッとするわけです。

この人にそんなことできるわけないって思うのはわかるけどさ、気持ちは本物じゃん!
一生懸命な人を嘲笑うのってよくない、絶対!

とか思ってしまうため、ずっとヘラーを応援し続けることになります。

あーーーなんでそんな! あーーーなんでーーー!? いやそんなわけないじゃん! 詰めが甘い! でも仕方ないよなあ、だってこの人、頭が超絶いいだけの、普通の人だもん!
頑張れ! なんとかなれ!

なんか頭の中で、ヘラーがいつのまにか“ちいかわ”に変換され、見ている私が“ハチワレ”になって、「なんとかなれーーっ!」と叫んでる感じ。

デジタル機器を駆使する戦い方というか、テロ組織を追い詰める手腕は本当にすごいんですよ。
でも、アクション的にはへなちょこなので、見ていてすっごくハラハラするのです。
ずっと心配し続けるという、面白い経験ができて、楽しかったです。
映画を鑑賞するって、やっぱり“体験”だよなあ、なんてことを、あらためて思ったりしました。

「予測不能なスパイ・アクション開幕」というキャッチコピーから予想するような内容ではない、気がします。
予想したのと違う、という意味で、期待はずれだったと感じる人もいるかもしれません。
個人的には、ずっとハラハラし続けるという体験ができたのと、物語として面白かったと思うので、満足しています。

スパイ・アクションというと、超絶技能を持つスパイが命懸けのアクションを繰り広げる、というイメージかと思います。
そういう王道のスパイものもいいですが、ちょっと捻った感じのスパイ映画が好きです。
『コードネームU.N.C.L.E(2015年)』や『アーガイル(2024年)』とか。
これ、偶然にも、どちらもヘンリー・カヴィルが出演していますね。

『アマチュア』は、アクションではなく、頭脳を使って敵を追い詰めていく物語です。
だから、普通のスパイ映画とは違います。
そもそもヘラーはスパイなのか?
CIAに所属しているエージェントは全員、スパイと呼ばれる存在なのかもしれません。

妻の復讐が話の本筋だから、ヘラーに同調して、悲しくなったり切なくなったり、やりきれない思いを抱えたりします。
だけど、ヘラーにとって、妻の復讐は、妻の死を受け入れ、自分の気持ちに折り合いをつけるために、必要なものだった。
彼が前に進むためには、妻の復讐を成し遂げなければならなかったのです。

打ちのめされた人が、行動を起こし、困難や辛さを乗り越え、前を向けるようになる。
また人生という道を、歩いて行けるようになる。
そういう物語が好きなので、『アマチュア』、とても良かったです。


※『コードネームU.N.C.L.E(2015年)』はソフトありますけど、『アーガイル(2024年)』は発売されてないようです。

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