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【映画紹介】国宝

映画の紹介と感想

※この記事は、この作品をこれから見る方へ向けた紹介&ちょこっと感想です。
予告や公式サイトでわかる程度の展開には触れていますが、映画の結末や重大な展開には触れていない、ネタバレなし感想になります。

どんな作品なのかを知りたい方は、ぜひご覧になってください。
この記事で、この映画に興味を持ってもらえたら嬉しいです。

映画『国宝』の基本情報

『国宝』(2025年/日本)
監督:李 相日
原作:『国宝』(吉田修一:著)
脚本:奥寺佐渡子
撮影:ソフィアン・エル・ファニ
美術監督:種田陽平
歌舞伎指導:四代目中村鴈治郎
出演(キャスト):吉沢亮、横浜流星、高畑充希、寺島しのぶ、森七菜、三浦貴大、見上愛、黒川想矢、越山敬達、永瀬正敏、嶋田久作、宮澤エマ、中村鴈治郎、田中泯、渡辺謙、ほか

→映画『国宝』の公式サイトはこちら

歌舞伎を知らなくても楽しめる、映画『国宝』の魅力

映画『国宝』は、吉田修一さんの同名小説を李相日監督が映画化した作品です。
歌舞伎を題材にしていますが、歌舞伎の知識がなくても十分に楽しめます。

むしろ、わからないからこそ、「芸に人生を捧げるとはどういうことか」という、普遍的でありながらもなかなか想像し得ないテーマが、見る人の胸にまっすぐに届いてきます。

歌舞伎のことを何も知らなくても、まったく問題ありません。
歌舞伎役者たちの姿や衣装の美しさに、目を奪われない人はいないでしょう。
これを見るためだけに、映画館へ行ってもいいんじゃないかと思います。

また、舞台上での所作や舞台美術まで、細部にわたって再現されており、まるで実際に歌舞伎座で観劇しているかのような錯覚を覚えます。
思わず、演劇場でのように、拍手しそうになってしまった人もいるのではないでしょうか。

そして何より、俳優陣の熱演が、この作品を力強いものにしてくれています。
通常の映画紹介記事では、出演者(キャスト)の紹介は主演や目立つ人物数人くらいしか記載しません。
しかし、この映画では、「誰もが皆、自分の人生の主人公であり、それぞれ何かを求めたり葛藤したりしている」ということがわかるので、できる限りのキャスト名を載せました。

そうしたくなるほどに、キャスト全員が魂を込めて“役を演じている”と感じるのです。

キャストの熱演(吉沢亮・横浜流星・田中泯・見上愛)

吉沢亮が体現する、“芸に生きる”姿

主人公・喜久雄を演じる吉沢亮さんの、「芸そのものに取り憑かれてしまった」とも言える演技は、とても見応えがあります。

喜久雄は素直さや義理堅さを持ちながらも、ときに人間らしい情を置き去りにしてしまいます。
その複雑な人物像を、吉沢さんは観客がしっかりと納得するように演じています。

芸の道に生きると決めた人間の、役者としての覚悟が伝わってくるので、すごい演技だと思います。

横浜流星が演じる、ひたむきさと弱さ

喜久雄のライバルかつ、同じ道を目指す同志である俊介を演じるのが、横浜流星さんです。

歌舞伎の名門一家に生まれ、真剣に芸に打ち込みながらも、どこか“坊ちゃん気質”が抜け切らない。
努力する姿と、弱さとも脆いとも言える姿の両方を、しっかりと見せてくれます。

田中泯の圧倒的存在感

田中泯さんが演じる人間国宝・万菊の存在感は圧倒的です。

言葉のひとつひとつ、視線のわずかな動き、かすかに動く表情から、本物の芸の極みに立つ人物であるということが伝わってきます。

人間国宝という唯一無二の存在が、ここにいる。

自然にそう思わせてくれる存在感は、本当に圧倒的です。

注目の俳優、見上愛

舞妓・芸妓である藤駒を演じた見上愛さん。

映画『不死身ラヴァーズ』(2024)で存在を知った俳優さんです。

『不死身ラヴァーズ』で、「明るくてかわいらしいが、ふとした瞬間の憂い顔にハッとさせられる」という、強烈な印象を残していたので、本作の出演シーンで彼女に気づいたとき、「あっ」と思いました。

奇しくも、もしくはキャスティングした誰かが同じように感じたのか、今回の役柄がまさに「明るくかわいらしいが、ふとした瞬間に見せる憂いが印象的」なものなので、やっぱりすごく印象に残る人だなと思いました。

2026年春のNHK朝ドラ『風、薫る』で主演を務めることも決まっているそうで、今後の活躍が楽しみです。

映画『国宝』のあらすじ(ネタバレなし)

任侠一家に生まれた喜久雄(吉沢亮)は、ヤクザ同士の抗争により天涯孤独の身となったあと、上方歌舞伎の名門の当主・花井半二郎(渡辺謙)に引き取られ、歌舞伎の世界に飛び込むことになる。

そこで出会ったのは、半二郎の実の息子であり、生まれながらに将来を約束された御曹司・俊介(横浜流星)。
歌舞伎の家系とは無関係の喜久雄と、成功へのレールが敷かれている俊介は、生い立ちも才能も異なっていたが、ライバルとしてお互いに高め合っていく。

芸に青春を捧げ、役者として生きることに突き進む二人。

しかし、さまざまな出会いや別れが、二人と周囲の運命を狂わせ、それぞれにもがき苦しむことになっていく……

ちょこっと感想:俳優陣の熱演に引き込まれる

映画を観てまず感じたのは、俳優陣の役への入り込み方がすさまじいということです。
特に、吉沢亮さんの演技がすごいと思いました。

どうすごいと思ったのかというと、喜久雄という人物が“本物の歌舞伎役者になろうと努力する姿”と、吉沢さん自身が“喜久雄を演じきろうと努力する姿”が重なり合って見えたからです。
その真剣さに引き込まれ、心を揺さぶられました。

他の俳優さんも、演じている人物それぞれに、人生があるのだということを感じさせてくれました。

誰もが自分の人生の主人公で、誰かひとりの“主人公”のための脇役では決してない。

それぞれの立場から見た事情や葛藤、望みが絡み合うことで、人生がままならないこと、それでも人はもがき苦しみながらも進んでいくのだということを、まざまざと見せつけられたと思います。

虚構と真実が交錯する、“演じるということ”

女形という存在が投げかける問い

この映画を通して、「女形」という存在について深く考えさせられました。

歌舞伎では女性が舞台に立てないため、女性の役を男性が演じます。
その、女性の役を演じる男性役者を、「女形」と呼びます。

映画を見ていて、女形というのは、幻の存在だと思いました。

役になり切る、役の心情を理解するといっても、演者は男性です。
女性の気持ちなど、真の理解はできないでしょう。

そもそも、歌舞伎の演目(物語)に登場する女性は、「男性が想像し、最大限に慮った女性」なんだろうと思います。
だとすれば、そのような女性は現実には存在しない、と言えるでしょう。

虚構が“本物”を生む瞬間

虚構にしか存在しない女性を、男性が「心情まで完璧に理解」して、演じるということ。

演じること、演じている役というものがそもそも虚構であるのに、「実際には存在し得ない女性を、男性が演じている」ことで、さらに虚構が強化されます。

しかし観客には、その感情や心情が、本物として伝わってくるのです。
まぎれもなく虚構なのに、その感情は“本物”なんです。

マイナスにマイナスをかけると、プラスになります。
それと同じように、虚構に虚構を重ねたら、“本物”になったのです。

虚構に虚構を重ねた果てに、むしろ“本物”の感情が生まれてしまう。
歌舞伎が、そしてこの映画が提示しているものは、「演じるということ」の逆説的な魔力、魅力なんだと思いました。
そしてそれこそが、「演じることの本質」なのでしょう。

歌舞伎を超えた人間ドラマとしての映画『国宝』

「人間ドラマが素晴らしい」
「胸を打つヒューマンドラマ」

そのような謳い文句の映画を、私は正直いうとあまり見ません。
そんなに興味を持たないんです。
なにしろ、大好きな映画のジャンルはホラー、ミステリー、タイムリープ、SF、女の子がかわいい、とかなので。

映画館で『国宝』の予告を見たとき、「映像はとてもきれいだけど、話がすごく重そうだな」と思いました。
この主人公めちゃくちゃ苦労するんだろうなー、辛いんだろうなー、と感じたので。

でも、ホラー映画関係の映画評論をする人が、「国宝、大傑作!」と言っていたので、ホラー映画ファンに刺さるなら私にも面白いかも、と思って興味が湧きました。
※もちろん、ホラー映画だと思って見に行ったわけではありません!

結果、見に行って良かったです。
見た直後は、「すごく面白いし、人にもすすめたいけど、なんて言ってすすめればいいのかわからない」と思っていました。

この作品が公開されたのは、2025年6月6日。
私が見に行ったのは、7月14日です。

約1ヶ月間、自分の中で煮詰めて煮詰めて、ようやく「こう感じたからおすすめしたい!」という考えがまとまったので、紹介記事にしました。

まとめ:映画『国宝』は歌舞伎の美しさと人間ドラマを堪能できる

芸道を極めるために、自らの心身を削りながら役に生きる、役者たち。
その努力の果てに立ち現れるものは、“虚構を演じる”ことではなく、“真実のようなもの”なのだと実感しました。
普通に暮らしていたら触れられない、表現者の業の深さを感じられるのが、この映画の大きな魅力です。

映画『国宝』は、興行収入100億円を超え、公開から2ヶ月経過した8月19日現在でも、映画館で絶賛公開中です。

「演じることとは~」とか、そんなことは考えずに、ただ絢爛豪華な歌舞伎の世界にどっぷり浸かる、というのも、この映画の楽しみ方のひとつです。

また、主人公の喜久雄と、歌舞伎役者の家に生まれた俊介との関係が、この物語の大きな柱となっています。
対照的な人生を歩む、生き方も価値観も異なる彼らが、舞台の上でどう交わり、どう分かれていくのか。

その行方を、そして“芸を極めるとはどういうことか”を確かめるために、ぜひ映画館で映画『国宝』をご覧になってください。

映画『国宝』の原作小説紹介&映画『不死身ラヴァーズ』配信情報

映画『国宝』の原作小説

上巻「青春篇」、下巻「花道篇」の上下巻で、文庫版が朝日文庫から出版されています。

 

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映画『不死身ラヴァーズ』amazonプライム・ビデオで配信あり

見上愛さん主演の映画『不死身ラヴァーズ』(2024年)がamazonプライム・ビデオにて配信中です。

あらすじ:
長谷部りの(見上愛)は、幼い頃に“運命の相手”甲野じゅんに出会う。
彼を忘れられないまま中学生になったりのは、ついにじゅんと再会する。

じゅんに「好き」と想いをぶつけ続け、やっと両思いになったのだが、その瞬間に彼は消えてしまう。
まるで、最初からこの世の中に存在しなかったかのように。

しかしその後も、高校の先輩として、車椅子に乗った男性として、バイト先の店主として、甲野じゅんは“いままでの彼とは別人(りのとの記憶がない)”として彼女の前に現れる。
そのたびに、りのは恋に落ち、全力で想いを伝えていくが、両思いになった瞬間、やはり彼は消えてしまう。
それでも、りのは彼をあきらめず、出会い直すたびに「好き」と伝え続けるのだが……

……という話です。
どこまでもまっすぐに「好き」を伝え続ける女の子の恋を、見守ってみませんか?


不死身ラヴァーズ

 

 

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