※この記事は、この作品を鑑賞した方へ向けた、ラストまでの重要な展開に触れているネタバレ全開感想です。
未鑑賞の方は、ご注意ください。
※※作品への好意的な点だけではなく、疑問に感じた部分や合わなかった点についても率直に触れています。
作品を深く愛している方や、肯定的な感想のみを求める方には、合わない可能性があります。
- 基本情報
- あらすじ
- はじめに:万人におすすめはしないけど、語りたいことはある
- 物語の全体構造:3つの事件と物語を貫く1つの大きな謎
- 『ふるはうす☆デイズ』の裏側に隠されていた秘密
- 崖の悲劇と伏線:少女はなぜ崖から落ちたのか
- ルーの動機と共犯の可能性:まさか親が?
- 撮影と配信は親の主導で行われていた:では、殺人は?
- 『#真相をお話しします』1つめの事件:惨者(さんしゃ)面談
- 語られた“真相”の背後にあるもの
- 被害者のような顔をしている、加害者
- 『#真相をお話しします』2つめ&3つめの事件
- 桐山が語る事件:三角奸計
- そして語られる、最初にして最後の事件の“真相”
- 真に復讐すべき相手とは?
- すべての視聴者は当事者である
- おわりに:気に入っているところ2点
基本情報
『#真相をお話しします』(2025年/日本)
監督:豊島圭介
脚本:杉原憲明
原作:結城真一郎『#真相をお話しします』
出演:大森元貴(Mrs.GREEN APLEE)、菊池風磨、中条あやみ、岡山天音、ほか
あらすじ
世間の誰も知らない真相を話し、視聴者から“投げ銭”をしてもらえると、その投げ銭と同額の賞金がもらえるという暴露系配信番組、『#真相をお話しします』。
このチャンネルの視聴者である警備員の桐山(菊池風磨)は、抱えている借金を返すため、自分の知っている暴露話を投稿する。
それは、警備員として働く中で知り合った鈴木(大森元貴)に勧められてのことでもあった。
「投げ銭なんかじゃんじゃん来ますよ。桐山さんの話、すごいから」
自分の話が選ばれますように、と祈るような気持ちで配信を見つめる桐山をよそに、他の視聴者の暴露話が披露されていく。
世間を騒がせた有名な事件の裏側にある暴露話が、次々に紹介されていくが……
はじめに:万人におすすめはしないけど、語りたいことはある
面白くないわけじゃないけど、人におすすめしたいかというと、そういう気持ちにはあまりならないかな、迷うな、という感じの作品でした。
ミステリ好きという観点から見ると面白いけど、なんていうか、映画での各エピソードの描かれ方などが、あまり好みではない感じ。
紹介される暴露話の“真相”や、その真相に絡んでつけられているタイトル、例えば「惨者(さんしゃ)面談」とかは、結構興味をそそられるんですよ。
明かされる真相も、「うわあ」「マジか」「そういうことだったの!?」という驚きや恐怖を感じるものなんです。
だから、そういう、驚きの真相とか、ミステリで言うところのダブルミーニング(一つの言葉に二つの意味を持たせる。たとえば「さんしゃめんだん」に「三者面談」と「惨者面談」を掛け合わせて表現する)の面白さはあるし、そこは見ていて「なるほどね~」となります。
が、個人的に、いやそれなんかおかしくない? というツッコミどころがいっぱいあって、そこが気になってしまい、いまいちノレなかったです。
なんていうか、なんだろう、「この真相、とんでもないでしょう? 怖いでしょう?」と話している“真相”より、もっと怖いことがあるじゃん、それについてなんで誰も触れないんだ、と思ってしまいました。
むしろ、それがこの映画の目的なのかな?
映画を見ている人が、「ねえ! そんなことより、この事実のほうがずっと怖くない!?」と思うまでがセットなのかな?
だとしたら、その目論みは成功しています。
というわけで、その「この事実のほうがずっと怖く(エグく)ない!?」という部分について、感想を書いていきたいと思います。
※映画を見た人向けに書いているので、事件の概要などは簡単な解説になっています。
※※原作小説を読んでいませんが、この映画の最大のオチというかラストシーンに関わるあれこれは、映画オリジナルの展開であるということは知っています。
物語の全体構造:3つの事件と物語を貫く1つの大きな謎
全体に大きな謎があり、その謎が背後にちらつきながら、3つの事件の真相が明かされる。
という構造になっている作品です。
全体の大きな謎とは、『ふるはうす☆デイズ』という配信番組についてです。
かつて一世を風靡した『ふるはうす☆デイズ』という、離島に移住してきた3家族の子供たち3人と、島の子供りんこちゃんの計4人のグループの日常を動画配信していた番組、に関する謎。
表向きの謎は「この配信番組はある日突然終了してしまった。あんなに人気があったのに、なぜ終了してしまったのか?」というもの。
『ふるはうす☆デイズ』は全国的に人気があり、メインの子供たち3人(チョモ、サテツ、ルー)のデフォルメイラストを利用したグッズも大量に製作され、売上も好調だった。
そんな人気配信が、突然の最終回を迎えた。
しかもそれは、非常に不穏な内容の最終回で、さまざまな憶測を呼ぶ内容だった。
この件に関する、暴露された“真相”は、「子供たちの1人であるルーが、りんこちゃんを崖から突き落として殺したんじゃないのか?」というもの。
これに関しては、物語の進行とともに、徐々に“真相”が明らかになっていきます。
ルー(本名:ルージュ)と呼ばれていた女の子が、りんこちゃんを、崖から突き落とした。
そのことを知ったチョモ(本名:ちょもらんま)とサテツ(本名:砂鉄)が、ルーに真相を話すよう迫り、話さなければ殺すと脅しているところを生配信したことがきっかけで、『ふるはうす☆デイズ』は終了します。
『ふるはうす☆デイズ』の裏側に隠されていた秘密
『ふるはうす☆デイズ』には、公然の秘密がありました。
視聴者と配信者は知っているけれど、出演している子供たち、チョモとサテツ(と、りんこちゃん)は知らない秘密。
実はこの番組は、彼らには存在を知らされておらず、すべて隠し撮りされた映像が配信されていたのです。
チョモたちの親は、子供を自然の中で育てたいと言って、スマホなどを持つことを禁止していました。
そのため、チョモとサテツは動画配信番組というものがあることすら、知らなかったのではないかと思います。
りんこちゃんが崖から落ちて死んだことがきっかけで、チョモとサテツは自分たちの生活が動画配信されていることを、初めて知ることになります。
そしていろいろと調べていくうちに、りんこちゃんは崖から落ちた事故死ではなく、ルーに殺されたんじゃないかと考えるようになるのです。
動機は、「りんこちゃんがスマホを所有したことで、『ふるはうす☆デイズ』という配信番組があること、自分たちが隠し撮りされていること、それをチョモたちは知らないということに気づいたから」です。
あともうひとつ、嫉妬もあったのかな、と思います。
チョモとりんこちゃんはお互い好意を持っていたし、そのことをルーは苦々しく思っていたようなので。
でも一番の動機は、「チョモとサテツにこの番組のことを知られたら、配信を終了せざるを得なくなってしまうから」でしょうね。
崖の悲劇と伏線:少女はなぜ崖から落ちたのか
ここで、1つ謎が発生します。
それは、「ルーがりんこちゃんを殺したのは、自分1人の考えでやったことなのか?」というものです。
ちなみに、映画を見ている限り、ルーがりんこちゃんを殺したという直接的な証拠は、多分ありません。
りんこちゃんが崖から落ちたと思われる時間、ルーはチョモという証人がいるアリバイがあるが、そのアリバイはかなり不自然な行動によって生み出されたもので、映画を見ている私たちも、ルーが犯人だな、と思います。
でも、決定的な証拠はない。
当時の警察が本気を出して調べたら証拠は見つかったでしょうが(アリバイトリックに使ったものに付いた指紋など)、りんこちゃんは事故死という扱いだったため、そんな証拠探しはされてないのです。
ただ、ルーがりんこちゃんを殺したのは間違いないと思います。
思いっきり伏線だとわかるシーンが、序盤に出てくるので。
りんこちゃんが落ちた(突き落とされた)、切り立った崖。
その崖の手前の安全な場所に、仲良しの4人の子供たちが笑顔で並んで立って海を見ている、というシーンが遠景で映し出されるところがあるんです。
このシーンで、崖がどれだけ険しいか、こんな危険なところに子供1人では来ないだろうとか、来ることがあるとしても崖の先端には立たないだろうとか、そういうことが一瞬で理解できるんです。
このシーンを見たとき、「あ、この4人のうちの誰かが、ここから落ちて死ぬんだな」と思いました。
これが伏線なら、崖から落ちた=自分1人であんな危険な場所に近づくはずがない=誰かに殺された=他の大人に連れ出されたとしたら、りんこちゃんはついていかないだろう=友達だと思っている存在に連れ出された=チョモとサテツは犯人ではない=犯人はルー、という図式が成立します。
ルーの動機と共犯の可能性:まさか親が?
さて、ルーは自分1人の考えで、りんこちゃんを殺したのか?
多分、答えはYESかなーと思います。
『ふるはうす☆デイズ』は、隠し撮りされた映像が、本人たち(少なくともチョモとサテツの2人)の預かり知らぬところで配信されていました。
この映像を撮って配信していたのは誰か?
間違いなく、彼らの親です。
そして、ルー。
ルーも隠しカメラで、自分を含めたチョモたちを撮影していました。
そうでなければ、撮影できないだろう映像がたくさんありますからね。
作中で、「ルーだけカメラ目線になる一瞬が何回もある」と、チョモたちに指摘されてもいました。
『ふるはうす☆デイズ』という番組は、島へ移住してきた3人の子供たちの親が撮影して配信していた。
そして、子供たちの1人であるルーも、その事実を知っており、撮影にも加担していた。
撮影と配信は親の主導で行われていた:では、殺人は?
となると、何も知らないチョモとサテツに、『ふるはうす☆デイズ』の存在を知られてしまうのは、何があっても阻止しなければならないことのはずです。
それが、りんこちゃんの手にしたスマホによって、秘密が暴露されそうになってしまった。
それを防ぐために、ルーはりんこちゃんを殺した。
1人で考えて実行したのか?
それとも、親に殺すように言われてやった?
ざっくり感想で触れた「この事実のほうがずっと怖く(エグく)ない!?」を想起させることが、この映画の目的なんだとしたら、“真相”は「りんこちゃんを殺すように親に言われて、実行した」ですよね。
親は『ふるはうす☆デイズ』を終了させるつもりはなかったし、そのためにはなんでもやったかもしれない。
でも、だからといって、自分の子供に殺人を命じるか? となると、そこまで極悪非道ではない、と思いたい、かも。
ルーの態度や口調が、秘密がバレそうになるときに割と憎々しげなので、この子なら殺しをためらわないかもなーと思ってしまうのもあって、ルーの単独犯行かなー、と思っています。
ただ、ルーの両親、そしてチョモとサテツの親も、ルーの殺人行為は知っていた(わかってしまった)んだろうなと思います。
ちなみに、小学生くらいの子が殺人なんてする!? と思うかもしれませんが、実際にそういう事件はあるので、まあ、ないこともないと思います。
『#真相をお話しします』1つめの事件:惨者(さんしゃ)面談
家庭教師の営業に訪れた家で、奇妙な母と子の3人で面談をしたという、営業さんの経験が話されます。
態度のおかしいエキセントリックな母親と、終始びくびくしている子供という、異様な雰囲気の中で進んでいく三者面談。
子供に算数の問題を解かせてみると、何度も「110」という答えを書いてくる。
いぶかしく思っているうちに、ある事実に気が付く。
これは計算の答えの「110」ではなく、警察への通報番号「110番」、つまり警察に電話して、ということではないのか?
そのことに気づいた営業(大学生のアルバイト)は慌てて立ち上がり、そしてトイレに隠されていた女性の死体を見つけてしまう。
子供の母親だと思っていた女性は、実は本物の母親を殺した犯人だったのだ……
という事件の、他の誰も知らない“真相”は、以下の通りでした。
単身赴任している父親とともに訪れた病院か警察で、営業さんは驚愕の真実を伝えられます。
「110」というメッセージを伝えてきた子供は、この家の子供ではない。
子供は数ヶ月前に事故で亡くなっている、と聞かされるのです。
じゃああの子はどこの誰なんだ、と驚く営業さんに、父親は言います。
「あの子は最近近所で空き巣を繰り返していた子です。うちに空き巣に入ったところ、たまたま殺人現場を目撃してしまったんでしょう。そして犯人の女性は、うちの子が亡くなってから隣に越してきたので、うちの子が亡くなっていることを知らなかった。それであの子を、うちの子だと思い込んだんだと思います。妻は、子供が亡くなったことを受け入れられず、子供が今も生きてそこにいるかのように振る舞って生活していたんですよ。だから、隣の女性も、うちに子供がいると信じきっていたんでしょうね。そして妻は、隣の女性が子供が産んでいないことについて、ことあるごとに嫌味を言っていました。だから隣の女性は、妻に憎しみを募らせていたんだと思います」
憔悴した表情で淡々と話す父親と、それを驚きながら聞く営業さん。
「これが、この事件の真相です」と営業さんが締めくくると、“真相”に興奮した視聴者の投げ銭が、300万円に達したのです。
語られた“真相”の背後にあるもの
けど、なんか、この話、おかしくない?
親子だと思っていた2人が、親子じゃなかった。
母親だと思っていたほうが実は犯人で、子供は場を切り抜けるために脅されて従わされていた。
その子供も、実はこの家の子供ではなかった。
たまたま空き巣に入っただけの、他人だった。
他人同士で恐怖の三者面談をしていたのだ、というのがオチなわけですが。
なんで単身赴任している父親は、そんなメンタル大暴落の妻を、家に1人にしておくんですか!?
亡くなった子供が生きているかのように振る舞ったり、子供がいることを鼻にかけて、子供がいない隣人に嫌味を言ったり。
実際は、自分も子供を亡くして、心が壊れてしまっているのに。
こんな人を1人にしておくなよ!
単身赴任なんかしてないで、帰ってこいよ!
それが無理なら、そんな会社辞めちまえ!
被害者のような顔をしている、加害者
と思って、一番怖いのここでしょ、この妻をほったらかしにしておく夫でしょ!? と思いました。
たまにいる、苦しんでいる人を見るのが辛くてできない、って人かなあ。
病気で苦しんでいる身内の姿を見ると自分が辛いから、お見舞いに行けない。
行ってもそそくさと帰ってしまう。
そういう人がたまにいますが、この夫(父親)も、そういう人だったのかもしれません。
でもこの人が妻のそばにいてあげたら、隣人女性は妻の嫌味に耐えかねて殺人を犯す、ということにはならなかったんじゃないかと思うんですよねえ。
この話の一番怖いところは、「そういう妻をほったらかしにしておきながら、なんか悲痛な顔してる夫」じゃない?
客観的に見ると、この人は子供を失った上に妻も失っているんだけど、それで憔悴するくらいなら、なんで妻を守ろうとしなかったわけ!?
加害者とまでは言えないかもしれませんが、「何もしなかった」という点で、なんらかの責任はあるんじゃないかなと思いました。
『#真相をお話しします』2つめ&3つめの事件
他の2話についても、そんな感じです。
2話目は、“真相”をその関係性でニヤニヤしながら話してるこの人が怖いよ! と思いました。
あと、この人は加害者家族なので、こんな平和に話ができる環境にいるのおかしくない? 加害者家族が受ける迫害ってかなり深刻だけどなあ、と思ったりもしました。
この2話目は嫌いなタイプの話だったので、触れるのはこのくらいにしておきます。
3話目は、警備員の桐山さんの話でした。
大阪(地元)にいる友達A、友達Bと、東京にいる桐山さんの3人でリモート飲み会をしている最中、友達Aの婚約者が浮気をしているという話になる。
友達Aは婚約者の浮気相手を友達Bだと思っていると桐山さんに話す。
これからBを殺しにいく、と告げられて、慌てる桐山さん。
Bに逃げるように伝えると、Bは成り行きをまったくわかっていない様子で、「でもAの彼女めっちゃかわいいからさ、ふらっとなってしまうのもわかるよな。ほら、こんなにかわいいんだよ」と、Aの婚約者の写真を桐山さんに見せてくる。
その写真の女性は、桐山さんが今付き合っている彼女と同じ顔をしていた……。
桐山が語る事件:三角奸計
ということで、Aの婚約者の浮気相手がまさかの自分だった、という驚きと、そのことで彼女を「なんでこんなことをしたんだ。俺とあいつは友達なんだぞ!」と責めているところに、大阪にいるはずのAが桐山さんの家の中から現れてびっくり仰天。
Aは浮気相手の桐山さんを殺しにきたんだけど、彼女との会話を聞いて、桐山さんが本当に何も知らなかったということを理解し、殺す相手を桐山さんから彼女に変えた(もしくは2人とも殺すつもりだったが、彼女ひとりだけにした)。
そうして桐山さんの目の前で、友達Aは彼女を殺してしまうのです。
この事件のせいで、誰も信じられなくなってしまった桐山さんは、勤めていた一流商社を辞めざるを得なくなり、借金を重ねてしまうという転落人生を歩むことになるのですが。
この話で一番怖いのは、友達Bですよね。
Aが桐山さんを殺しにいくためのアリバイ作りというか、Aは大阪にいると思わせるための手伝いをしたり、婚約者の写真を見せて「お前が浮気相手だろ、わかってんだよ俺らは」みたいなムーブをかましてくるBが一番怖いよ。
それでいて、この人は多分、桐山さんのようにショックを受けて仕事辞めたりしてないし、なんなら今も普通に生活してるかもしれない。
桐山さん視点では、あくまでも「友達Aの婚約者の浮気相手がまさかの自分だったことと、Aが自分を殺しにきたこと、そして自分の目の前で殺人が行われたこと」にショックを受けて人間不信になりました、という感じなんだけど、いやいや一番怖いのBだから!
でも、Bに関する言及がないんですよね。
この件での「誰も信じられなくなった」の中に当然Bも入っているので、桐山さんも「Bに裏切られた、あいつは俺を殺す手伝いをしたんだ」とは思っただろうけど、その描写が映画の中で全然なかったので、いやいやいやいや、Bでしょ! この人が一番怖くない!? と思いました。
ただ、タイトルの『三角奸計』には、その意味が込められていますよね。
桐山さん、A、彼女の3人の『三角関係』と、桐山さん、A、Bの3人の間で繰り広げられていた『奸計』。
タイトルからも、Bの怖さは伝わってくるので、その点についてもう少し言及があってもよかったかなあ、と思います。
そして語られる、最初にして最後の事件の“真相”
3つの事件が話されたあとに、「ルーがりんこちゃんを殺した」という件についての真相が、当事者であるチョモとサテツから語られます。
桐山さんに『#真相をお話しします』への投稿をすすめた鈴木という男は、実は成長したチョモだったのです。
そして、『#真相をお話しします』を配信している配信者である砂鉄(岡山天音)と名乗る男性は、成長したサテツだったのでした。
成長してヨガスタジオの経営者などをやっているルー(中条あやみ)を拉致した2人は、『ふるはうす☆デイズ』の最終回となってしまった生配信の続きを、『#真相をお話しします』の中で行います。
ルーに、りんこちゃんを殺したのはお前だろうと迫るんです。
そして、ルーへの復讐を宣言し、その決断と実行を視聴者に委ねます。
チョモとサテツの復讐を果たすために、ルーを殺すか。
ルーを助けるかわりに、視聴者ひとりひとりの素性を全世界に公開するか。
ルーを殺す→グッドボタン。
ルーを助けるかわりに、自分の個人情報を全世界に公開する→バッドボタン。
さあ、どっちを選ぶ?
その究極の選択を提示し、チョモとサテツは復讐に視聴者を巻き込みます。
それは多分、匿名性に守られ、好き勝手なことを言い、無責任に配信を楽しんでいる現在の視聴者、そして『ふるはうす☆デイズ』が隠し撮りされたものだと知りながら(見ていれば、それがわかる)、やはり無責任に子供たちの生活と人生を搾取していたかつての視聴者に対する、復讐なのでしょう。
真に復讐すべき相手とは?
……というのはわかるんだけど、ここでも、いやいやそうじゃなくない? と思いました。
まあ、視聴者を巻き込むのは良しとしよう。
これってつまり、高みの見物してるんじゃない、お前たちも当事者なんだ、って事実を突きつけているわけですよね。
そして、自分たちがルーを殺そうとしていることに、視聴者を加担させている。
その意図はわかる。
ルーに復讐したいと思う気持ちもわかる。
でも、真に復讐すべき相手は他にいるでしょう。
親ですよ。
親には復讐したのか?
復讐しろと言っているわけじゃないけど、一番悪いのって、責任があるのって、親でしょ?
まあでも、親とは縁を切っているでしょうね。
学生のうちは仕方なく一緒にいただろうけど、もう真実を知る前の親子関係には戻れない。
随分とぎくしゃくとした親子関係になってしまったことでしょう。
もしかしたら、りんこちゃんの事件後は、親元を離れて祖父母のもとで育てられた、なんてこともあったかもしれない。
親子関係は断絶していて、お互いに居場所もわからないのかも。
そう考えると、親への復讐はすでに果たされているのかもしれません。
そしてなにより、チョモは「りんこちゃんが殺された」ことに対して、復讐したいんでしょうね。
だからルーだけがターゲットになった。
もっと正確に言うと、りんこちゃんの死は『ふるはうす☆デイズ』に関わるものだったから、何も知らなかったとはいえ、自分たちにも責任があると考えているのかもしれない。
だからこそ、この復讐によって社会的に制裁を受けたりすることも受け入れる覚悟があるんだろうと思います。
すべての視聴者は当事者である
「りんこちゃんは殺されたのか? 殺したのはルーなのか?」というのが、最後までひっぱる謎ではあるので、この解決というか顛末を、ラストに持ってくるのは至極当然です。
でも、それでいいのか?
ルーに復讐して、公開処刑して、それで終わり?
と思ってしまう。
そう見えてしまう、というところが、もうちょっと掘り下げることができたんじゃないかな、と感じます。
こうやって、「それでいいの? これでいいの?」と、思わせることも、この映画の目的なのかもしれません。
ルーを殺すことに賛成するか、反対して自分の個人情報をさらすかの二択を突きつけてくるのも、「あなたならどうしますか?」「この映画を見ているあなたも視聴者のひとりなんですよ。さあ、どっちを選びますか?」と問いかけているんでしょうね。
そういう問いかけをしてくるのもまた一興、ではありますが、このラストには、他にもツッコミどころがあります。
生配信番組だから、今まさに人が殺されようとしているところが、全世界に公開されているんですよ。
警察は何をしているんだ、と思ったりします。
まあなんかこの作品は全体的に、警察は何をしているんだ、と思うので、この映画の中の警察は、あまり勤勉じゃないのかもしれません。
おわりに:気に入っているところ2点
語られるエピソードが個人的に好きな感じじゃないので、人におすすめするのは迷うな、と思っているのですが、すごく気に入っている点が2つあります。
気に入っているところ:「一生のお願い」
サテツが、天然でポンコツ気味の素直な子なので、しょっちゅう「ねえ~、一生のお願い!」って言って、チョモにいろんなことを頼むんですよ。
チョモはそんなサテツに「サテツの一生は何回あるんだよ~」なんて言いながらも、助けてあげたりしていました。
そうやってサテツは、何度もチョモに「一生のお願い」を叶えてもらっていたのです。
この物語の終盤で、チョモは余命わずかであるということが明らかになります。
多分もうすぐ死ぬ感じです。
映画のラストのすぐあとに死んでしまうかもしれないくらい、余裕がありません。
余命宣告を受けたあと、チョモはサテツに言います。
復讐をしたい、手伝ってほしい。
「一生のお願いだ」と。
「一生のお願い」を何度も言って、叶えてもらっていた側が、全身全霊をかけて叶える、相手からの初めての「一生のお願い」。
「一生のお願い」を叶え続けてきた側が、初めてお願いする、全身全霊をかけた最初で最後の「一生のお願い」。
それが“復讐”であるというところが切なく悲しいですが、このくだりはぐっときました。
こういう友情に、弱いです。
気に入っているところ:主題歌『天国』(Mrs.GREEN APLEE)
歌詞が、すごくチョモの気持ちっぽい感じで、この映画の主題歌に合っている、映画のラストを飾るにふさわしい歌だな、と思いました。
それもそのはず、主演のチョモを演じているのが、Mrs.GREEN APLEEの大森さんですもんね。
私はMrs.GREEN APLEEの名前は聞いたことがありますが、どんな歌を歌ってる人たちなのかとか、あまりよく知りません。
この映画で、初めてちゃんと、曲を聴きました。
多分他にも聴いたことのある曲はあるんじゃないかと思いますが、Mrs.GREEN APLEEだと認識していないんだと思います。
人生初のMrs.GREEN APLEEの楽曲『天国』が、切なく素敵な曲だったというのも、何かの縁なのかもしれませんね。
他の曲もいろいろ聴いてみたいな、と思っています。
Mrs.GREEN APLEEの公式YouTubeで、『天国』のoffcial Music Videoが公開されています。
映画を見てから聴くと、すごく心に響く歌です。
【天国/Mrs.GREEN APLEE】amazon music

天国
『天国』が収録されているベストアルバムです。私のような初心者にぴったりなアルバムですね。
原作小説はこちら
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