GHOST KILLER /ゴーストキラー ネタバレ全開感想

映画の紹介・感想

※この記事は、『GHOST KILLER/ゴーストキラー』のネタバレ全開感想を、同じ熱量の友人に話すような気持ちで書いています。
日記みたいな感じかもですが、この映画が好きなら、特に“笑わない男”影原さんのことが好きなら、読んでもらえると嬉しいです!

※そんなにネタバレしてない、一般向け感想

一般向け感想のほうであらすじや演者の紹介をしているので、こちらは登場人物についての話に特化しています。

 

「あんた、工藤のこと大好きじゃん」
「大嫌いです」

 

“笑わない男”、影原利久

叩きのめした四人の男たちの処遇に困り、工藤さんは影原さんに連絡する。
そのとき、ふみかに影原さんのことをこう説明します。

「影原は、“笑わない男”だ」

その紹介の通り、影原さんは、登場時から映画が終了するまでの間、一度も笑ってないと思います。
“笑わない男”という紹介の仕方から、クールな人なのかな、という印象を持ちます。

そして実際、影原さんは非常にクールです。
慌てず騒がず、常に沈着冷静、という感じです。
だけど、そんな影原さんのクールさが、少しだけ揺らぐときがあります。

それは、工藤さんとの関係について、言及されたとき。
影原さんと少し話して、少し一緒に行動しただけで、ふみかはすぐに理解します。

あ、この人、工藤のこと大好きなんだな、と。

そこで「あんた工藤のこと大好きじゃん」と笑いながら言うと、影原さんは少し早口で「大嫌いです」と言うのですが。

観ているこちらも思うわけですよ。
いや、大好きじゃん、と。
どう見ても、大好きです。

めちゃくちゃ尊敬してるし、信頼してるじゃん。
殺し屋組織のボスよりも、いや、この世界の誰よりも、工藤さんのこと一番信じて慕っているの、影原さんでしょ。

誰が工藤を殺したのか?

そう感じたことが正しいとわかるのは、工藤さんを殺したのが影原さんだった、ということが明らかになったときです。
ああ、やっぱりね、と思いました。

工藤さんは、伝説とまで言われた、凄腕の殺し屋。
そんな人を、その辺の殺し屋が殺せるはずがない。

しかも、工藤さんは抵抗した様子も防御しようとした形跡もなく、心臓を正確に撃ち抜かれている。
こんな殺され方をするには、条件が2つ揃わないと無理です。

条件1.工藤さんが「こいつになら殺されてもいい」と思うこと。
条件2.自分が殺されることで、影原さんを守ることができると工藤さんが考えること。

そう、工藤さんは、殺し屋組織から工藤抹殺を命じられた影原さんを守るために、あえて殺されたんです。
このことがわかったとき、心臓をぎゅっと掴まれたような気持ちになりました。

殺し屋組織のボスに拾われた工藤さんや影原さんは、“飼い犬”と呼ばれていた。
だから、彼らはボスのことを“飼い主”と呼んでいる。
最近、その飼い主が死んで、息子が跡を継いで二代目飼い主となった。
工藤さんはその新しい飼い主のやり方、考え方についていけなかった。
二代目にとっても、自分に従わない工藤さんは邪魔な存在となってしまった。
そこで、影原さんに、工藤さんを殺すように指示したのです。

工藤さんが本気で戦えば、影原さんは勝てません。
だから、工藤さんが確実に殺されたという事実から、条件1と2が発動したことがわかるんです。

「殺されてもいい、むしろここで自分が殺されてやらないと、影原の身にも危険が及ぶ。二代目のやり方にはついていけないし、潮時なんだろう。こいつに殺されて終わるのなら、それもいい」

工藤さんは、そんなふうに考えたんだと思います。
そして、無抵抗で、最後にタバコを一本吸って、影原さんが向ける銃口から逃げようとせずに、撃たれたんです。

“笑わない男”の隠された感情

工藤さんの、影原さんに寄せる信頼と庇護の感情、すごくないですか?
影原さんもまた、工藤さんの気持ちがわかっていたと思います。

本当は殺したくなかったんだと思う。
殺し合いになれば、自分が負ける。
むしろ、自分が負けて、工藤さんに殺されて終わりにしよう、って思ってたかもしれない。

なのに、工藤さんは影原さんを救うために、自分の命を差し出そうとした。
それがわかったから、影原さんは引きたくなかった引き金を、引いたんです。

こうするしかない、と思ったんだろうな。
影原さんがクールな人じゃなく、もっと感情をあらわにできるタイプだったら、激昂するなりなんなりして、殺し合うことを要求したりしたかもしれない。

でも、それができなかったんだろうな。
甘えることが、できなかった。
工藤さんの望む通りにすることが、自分が工藤さんに対してできる唯一のことだ、と思ったんだろう。

誰よりも生きていて欲しい人を、自らの手で殺すしかなかった。
とても悲しいし、めちゃくちゃ切ないです。

そして影原さんは、工藤さんの前で泣くんですよ。
なんで死んだんだ、なんで殺させたんだ、なんで、なんで、と。

やっと甘えること、自分の本心を伝えることができたんだなと思って、胸がいっぱいになりました。
誰が見ても、影原さんが工藤さんのこと信頼していて尊敬していて憧れていて、大好きなことはわかります。
だけどそれを指摘されると、少しムキになるような感じで、「大嫌いです」と否定していた。

大好きな人を、自分の手で殺さなければならなかったのは、とても辛かっただろうな。
しかもそれは、影原さんの命を守るための、工藤さんの選択だった。
そのことがわかっていたから、なおのこと辛かったんじゃないかと思います。
工藤さんの前で泣くことができて、本心を伝えることができて、よかったねと思いました。

守りたい人を、守るということ

そして、ここで工藤さんが幽霊となって現世に留まっている理由、がわかるんですよね。
物語の中で言語化されているわけじゃないけど、見ていればわかります。

工藤さんは、幽霊になりたての頃、自分が死んだときの状況を覚えておらず、誰に殺されたのかをわかっていなかった。
それで、成仏できない理由を、「自分を殺した相手に復讐したいからじゃないか」と考えた。
ふみかにもそう伝えて、成仏するために復讐を手伝ってくれ、なんて頼んでいました。

工藤さんを殺したのが影原さんだった、しかもそれは工藤さんが影原さんを守るために、あえて殺されることを選択した結果だった。
それがわかると、工藤さんが成仏できないでいる理由もわかります。

影原さんの置かれている状況が、まだまだ危険だからです。
彼もまた、いつ二代目によって殺されるかわからないからです。
影原さんも、二代目のやり方にはついていけないと思っていますからね。

つまり工藤さんは、死してなお、影原さんを守るために、幽霊となってふみかに取り憑いたのです。

共闘━━ふみかと工藤、工藤と影原、影原とふみか

殺し屋組織に存在を知られてしまったふみかは、住んでいるアパートを襲撃されます。
工藤さんの活躍により、撃退して逃げることはできたけど、部屋はめちゃくちゃです。

工藤さんを殺したのは影原さんだけど、それを命じたのは二代目飼い主。
ふみかから見ると、この人が工藤さんの復讐相手です。

アパートの部屋を壊されたり、殺すために襲撃されたりすることで、怒り心頭に達しているふみかは、工藤の復讐を一緒にやると宣言します。
もうこれは、工藤の復讐だけの話じゃなくなった。
巻き込まれたことで、ふみか自身の問題になった。
この殺し屋組織をどうにかしないと、ふみかも危険なんです。

目的が一致した二人は、殺し屋組織を壊滅させるために、本拠地に乗り込みます。
そこへ影原さんが現れ、協力を申し出てくれるのです。

影原さんにとっても、このまま組織に居続けたら殺される未来しか残ってないので、そうするしかない。
ここで影原さんという強い味方が合流してくれて、とても嬉しかったです。
いくら工藤さんが強いと言っても、ふみかの体は華奢な女子大生だし、一人では無理がありますからね。

影原さんが、ふみかの体を動かしている工藤さんに、「工藤さん」って呼びかけるのがまた、いいんだよなあ。

背中合わせに戦ったりするのも、すごくよかった。

工藤さんに体の主導権を渡しているときと、そうでないときで、ふみかの表情や動き、言動がまったく違うので、姿がふみかであっても、影原さんと工藤さんが二人一緒に戦っているというのが、見ていてわかるんですよ。
めちゃくちゃ息ぴったりなんです。
いつもこうやって戦っていたんだろうな。
この二人の共闘を、もっと見たかった。

殺しという非合法でアウトローなことをやっているんだけど、息ぴったりで背中合わせに戦う二人が本当に生き生きしていて、この姿をもっと見たかったなあ、なんて思いました。

決着、そして

二代目が最近“飼い始めた”、ものすごく強い殺し屋と、工藤さんはタイマンで戦うことになります。
この人がめちゃくちゃ強くて、工藤さんは劣勢に追い込まれてしまいます。
本来の工藤さんなら、もう少しなんとかできたかもしれませんが、なんといっても体はふみかなので、どうしてもハンデがあるのです。

工藤さんは意識を失ってしまい、ふみかから離れてしまいます。
意識を取り戻したふみかは、少し離れたところで気を失っている工藤さんに叫びます。

「幽霊が気絶するな! 起きろ! 工藤!」

そして、殺しにかかってきた相手に、ふみかは必死に抵抗し攻撃し返し、なんとか窮地を脱します。
ふみかの呼びかけに目を覚ました工藤さんが、ふみかの体に戻ったとき、影原さんが駆けつけ、叫びます。

「工藤さん!」

ふみかに向かって投げられる拳銃、それを受け取る工藤さん。
そして彼ら、ふみかと工藤さん、工藤さんと影原さん、影原さんとふみかは、最強の敵を倒したのです。

このシーンも、めちゃくちゃよかった。
ふみかと工藤さんが大ピンチなので、影原さんはいつ来るんだ!? とずっとハラハラしていたところに、「工藤さん!」と呼びかける声が聞こえ、そして銃が宙を舞う。

「工藤さん!」という呼びかけだけで、銃を渡されると瞬時に理解し、反応し、ちゃんと銃をキャッチして、狙いを定めて相手に撃ち込む。
ものすごく洗練された連携です。
普段からこうなんだろうな、と思える、非常にテンションの上がるシーンでした。

殺し屋組織は壊滅し、ふみかと影原さんの身の安全は保証された。
そこで、ふみかは工藤さんの姿が見えないことに気が付くのです。

工藤さんが見えなくなった、いなくなった、ということを、影原さんに伝えるふみか。
影原さんはただ一言、「そうですか」と返しただけだった。
でもこの返事に、いろいろな思いが詰まっていることが伝わってきて、胸が熱くなりました。

去ってしまった、自分が殺した大好きな人。
工藤さんを殺したのは影原さんだけど、多分影原さんは、工藤さんの死を受け入れられていなかったんだと思います。
ここでようやく、工藤さんの死を受け入れられた。

この先も生きていける、と思えるようになったんじゃないかな、と感じました。

必ず守る、という約束

殺し屋組織を壊滅させるために乗り込むとき、工藤さんはふみかに言います。

「お前のことは、俺が絶対に守る」

その言葉の通り、工藤さんは負けないことでふみかを守ってくれた(ふみかの体はぼろぼろになったけど)。
そして、成仏できなかった心残りの、影原さんも、守り切ることができた。
だから、工藤さんは成仏したんだと思います。

自分を殺すよう命じた二代目に復讐できたからじゃない。
そもそも、二代目を殺したの、工藤さんじゃないし。

残していくことが心配で成仏できなかったくらいに気にかけていた影原さんを、守り抜くことができたから、彼の安全を確信できたから、工藤さんは立ち去ることができたんだと思います。
工藤さんが現世に留まっていた理由も、守りたい人を最後まで守り抜いて戦ったことも、すごくかっこいい。

彼のフルネームは、工藤英雄です。
“英雄”ですよ。
HEROです。

工藤さんは、ふみかにとっても、影原さんにとっても、この物語を見ている私たちにとっても、ヒーローだったんだな、と思いました。

ふみかという女の子を通しての、二人の男の関係の再生と、そして別れ。

『ゴーストキラー』という映画は、そういう話だったんだと思います。

タイトルの意味と、三通りのバディ

ゴーストキラーというタイトルも、意味深なんですよね。

普通に考えたら、ゴーストキラーって、幽霊殺し、幽霊を殺す人、という意味になる気がします。
幽霊を殺す人、つまり幽霊を祓う人という、ゴーストハンター的な意味合いのほうが強いです。

幽霊が、殺す?

幽霊を、殺す?

ふみかの体を使って工藤さんが殺し屋相手に戦うのは、“幽霊が、殺す”こと。
ふみかに取り憑いた工藤さんが成仏することは、ある意味で二度目の死なので、“幽霊を、殺す”こと。

どちらの意味も込められている、ダブルミーニングなタイトルなのかなと思います。

『ベイビーわるきゅーれ』で殺し屋を演じている髙石あかりさんが、殺し屋に取り憑かれる普通の女子大生を演じるということで興味を持って鑑賞しましたが、その期待を上回る、というより、予想もしなかった方向からの、師弟関係だといっても過言ではない二人の男の熱い関係性の物語を見せてもらえて、本当にめちゃくちゃ良かったし、面白かったです。

ふみかと工藤さん。
工藤さんと影原さん。
影原さんとふみか。

その場に存在している人間は二人だけなのに、三通りのバディを楽しむことができるという、とても面白い映画だと思います。

バディものが好きな人にも、おすすめです。

 

 

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